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国内インフレの加速を予感させるファーストリテイリングの第1四半期決算

ユニクロやジーユーを経営するファーストリテイリングは、給与を最大で40%アップし、初任給も25.5万円から30万円に18%アップすることを先日発表しました。

そんなファーストリテイリングですが、1月12日に決算(2023年8月期・第1四半期)があり、国内ユニクロ事業において増収減益が発表されました。売上を伸ばしながらも減益となった背景には国内のインフレがあります。

今回は、日本のインフレという観点から、ファーストリテイリングの決算を見ていきたいと思います。

増収減益となったファーストリテイリングの第1四半期決算


ファーストリテイリングの第1四半期決算は、以下の通りでした。

  • 売上:7,163億円(前年同期比+14.2%)
  • 営業利益:1,170億円(前年同期比-2.0%)

さらに、セグメント別に分けると、以下のようになっています。

  • 国内ユニクロ事業
    売上:2,409億円(前年同期比+6.4%)
    営業利益:394億円(前年同期比-5.6%)
  • 海外ユニクロ事業
    売上:3,578億円(前年同期比+19.4%)
    営業利益:572億円(前年同期比-4.4%)
  • ジーユー事業
    売上:793億円(前年同期比+13.6%)
    営業利益:106億円(前年同期比+19.3%)

今回は、ファーストリテイリングの決算の良し悪しや株価のバリュエーションを論じることが目的ではありません。国内ユニクロ事業に見られたインフレの影響について詳しく見ていきます。

材料費や人件費のインフレによるコスト増に商品の値上げで対応するユニクロ


国内ユニクロ事業が増収ながらも減益となった背景にはインフレがあります。

決算短信において、以下のように説明されています。

売上総利益率は、急激な円安による調達コストの増加により原価率が上昇したことで、同1.1ポイント低下しました。売上高販管費比率は、パート・アルバイトの時給アップに伴う人件費の増加や、戦略的に広告宣伝費を増やしたことで、同0.8ポイント上昇しました。

ファーストリテイリングは8月本決算のため、第1四半期は9月〜11月となります。ドル円が150円に振れたのがちょうど10月であるため、急激な円安というのは、このことを指しています。

ドル円の推移(2023年1月12日時点)/ Google

柳井氏が昨年10月14日に円安の悪影響を語ったとき、高橋洋一氏など「円安で儲かっているくせに」とコメントした経済学者やコメンテーターが散見されましたが、ユニクロは実際に円安によってコスト増の悪影響を受けていたことが見てとれます。

円安はずいぶんと落ち着きを見せましたが、今度は先日賃上げを発表していました。日経新聞は、以下のように報じています。

ファストリ本社やユニクロなどで働く国内約8400人を対象に、年収を数%から約40%引き上げる。新入社員の初任給は月25万5千円から30万円に、入社1~2年目で就任することが多い新人店長は29万円から39万円になる。

そのため、ユニクロは引き続き、インフレによるコスト増のプレッシャーを受けることとなるでしょう。そのコスト増による利益低下を避けるために、ユニクロは店頭商品の値上げを進めています

値上げは、昨年の12月に値上げを発表されており、その値上げが店頭商品価格に反映されるのは、まさにこれからということになります。以下は、テレ朝ニュースからの引用です。

ユニクロは売れ筋商品「感動ジャケット」などを1000円値上げします。値上げされるのは来年1月中旬ごろから順次発売される、春夏向けの一部商品です。例えば、軽さや伸縮性を売りにした「感動ジャケット」は新たにUVカット機能を付けて5990円から6990円になります。

こうしてパズルのピースを繋ぎ合わせてみると、昨年の柳井さんの円安発言や商品値上げのニュースから、今年の決算や賃上げのニュースまで、すべてが繋がって一枚の絵として浮かび上がってきます。そして、そこに描かれているのは、まさに国内のインフレです。

日本のインフレ加速は長期金利上昇を招くと考えるのが自然


先日は、東京都の消費者物価指数が前年比+4.0%となったことを紹介しましたが、こうした個別決算を見ても、日本国内のインフレは加速すると考えるのが自然に思われます。

1月20日には全国消費者物価指数(CPI)が発表されますが、ここでもインフレの傾向が確認できた場合は、その確度はさらに高まります。

現在、日本の長期金利はイールドカーブコントロールを通じて管理されており、昨年12月には±0.25%から±0.5%へと変動許容幅の拡大が行われました。その後、しばらくは0.4%台で推移していた日本の長期金利ですが、現在は0.5%に張りついた状態となっており、債券市場が日銀に対して、さらなる変動許容幅の拡大(実質利上げ)を促す形となっています。

日本10年国債金利(2023年1月12日)/ Investing.com

結論


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