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ウォルマート経営陣:消費者の購買力はまだ強いが、今年後半は不明

グローバルマクロ投資を行うにあたって、情報を収集するのであれば、「主要な経済指標に関する情報」や「思慮深い投資家や経済学者の考え」に加えて、「企業の経営陣の見立て」を知るように努めるのが良いでしょう。企業の経営陣は、常に売上やコストの状況を監視しており、それはまさに経済動向の最前線だからです。

そこで本日は、少し古い情報となりますが、2023年2月21日に行われたウォルマートのアナリスト向け決算カンファレンスコールから、気になったコメントを紹介しておきたいと思います。

消費者の購買行動は選択的だが前向き


アナリストの質問に対して、消費者の購買行動については、思慮深く・選択的になっているものの、まだ健全で前向きであると、ウォルマートの経営陣は述べました。

ウォルマートUSのCEOであるジョン・ファーナーは、以下のように述べました。

消費者に関しては「選択的である」というのが、今の状況を言い表すのに最適な言葉だと思います。

サムズ・クラブのCEOであるキャスは、以下のように述べています。

第4四半期(2022年11月〜2023年1月)を通じて、私たちは消費者が家具やアパレルといった生活必需品以外のカテゴリにおいて、どのように振る舞うかに注目していました。また、スーパーボウルやバレンタインといったイベントも見てきましたが、現時点では、消費者の購買は非常に前向きに保たれている状況であることを確認しています。

最後に、ウォルマート・インターナショナルのCEOであるジュディスは、以下のように述べました。

「選択的で思慮深い」というのは、消費者の購買行動を説明するのに本当に良い言葉です。

彼らの言葉を要約すれば、リベンジ消費と言われたような狂喜乱舞の状態は過ぎ去り、何を買うべきかをしっかり選ぶようになったものの、購入を控えるような行動は見られないということでしょう。

実際に、ウォルマートの売上推移を見てみると、前年比の売上成長率ではピークを超えているものの、依然として前年比+7.3%という高水準にあることが分かります。

ウォルマートの四半期売上推移 / Mercury's

今年後半の景気状況は不明


直近の購買行動については前向きであるという説明が相次いだものの、今年の後半を考えると、景気の状況は見通しにくいというのがウォルマート経営陣のコメントでした。

米国ウォルマートの2023年の売上成長率のガイダンスが前年比+2.0%〜+2.5%であったことについて質問を受けると、CFOのジョンは以下のように答えました。

マクロ経済には多くの不確実性があります。私たちは、FRB がこれを短期間で引き締めるのを見たことがありません。延滞率が上昇し、自動車ローンなどの問題が発生し、貯蓄率が低下しています。今年の後半戦は不明な点が多いです。

2022年の米国ウォルマートは前年比+8.3%で成長したことを考えると、ガイダンスの+2.0%〜+2.5%というのは急減速です。今年後半に米国経済が景気後退に陥る可能性については、引き続き、警戒しておくのが賢明でしょう。

食料品のインフレは続いている


食料品のインフレについて尋ねられると、CEOのダグ・マクミロンは以下のように返しました。

食料インフレはすべてのカテゴリーの中で最も頑固です。第3四半期は2桁台半ばでしたが、第4四半期もそれほど減速していません。ここ数か月で少し下がったと言えると思いますが、現時点ではまだ高いレベルのインフレです。

FREDのCPIデータを見ても、食料品のインフレ率は前年比+10%程度で推移しており、まだまだ高い水準にあります。

CPI(食料品・2023年1月分まで)/ FRED

以前のレターで書いた通り、3月〜5月はエネルギー価格のデフレによってインフレ率が減速することを予想していますが、食料品の高インフレ率は年後半まで続く可能性があります。

結論


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