5 min read

住宅大手レナー社CEO:住宅市場は底打ちも地銀の貸し渋りに注意が必要

米国の住宅建設大手レナー社の決算発表が3月15日にあり、アナリスト向けのカンファレンスコールも行われました。

レナー社は、住宅建設業者の中でもキャッシュフローを重視しており、土地の取得から販売までを短期で回す経営をしています。そのため、景気動向に敏感な建設業者となっており、その決算からは経営陣が米国の景気をどのように考えているかを伺うことができます。

住宅インフレは頭打ち、納品数も底打ちか


まずはLENNAR社の新規注文数・納品数と納品単価の推移をまとめたグラフを紹介します。

LENNAR社の数値推移(2023Q1)/ Mercury's

レナー社は、注文キャンセル等を防いで納品数を維持するために、値下げ等で対応してきたため、住宅の納品単価は2022年Q3に頭打ちとなり、その後は下落してきました。

また、住宅の単価が上がるのと反比例するように新規注文数が緩やかに下降していましたが、2022年Q4で底打ちしたように見えます。実際、LENNAR社では、2023年の納品数は62,000軒〜66,000軒の間になると予想しており、これは2022年から概ね横ばいの数字となっているので、一旦は底打ち・横ばいとなりそうです。

底打ちの背景には、長期金利の低下もあるでしょう。長期金利は住宅ローン金利の基準となりますが、昨年の11月にピークを超えて、その後は徐々に低下しています。

米国10年国債金利(2023年3月16日執筆時点)/ Trading View

まとめると、住宅価格と長期金利の低下を受けて、消費者は徐々に家の購入を再開しており、基本的に住宅市場はインフレからの脱却・正常化に向かっていると考えられます。

レナー社CEOのスチュアート・ミラー氏は、以下のように述べています。

2022年の急激な利上げという突然のショックは和らぎました。また、住宅価格はネットで下落していますが、インセンティブの金額は下落しており、注文のキャンセル率も低下傾向にあります。利益率も底を打っています。これはコスト削減が各種の悪影響を相殺しはじめているからです。

住宅販売件数が減ることによる失業率の上昇などを警戒していましたが、この数値を見る限りは、不動産業界からの景気後退を現時点で心配する必要はなさそうです。

レナー社CEO:地銀の混乱には注意が必要


一方で、注意が必要な点もあります。

直近では、シリコンバレー銀行等の経営破綻を受けて、地銀株が大きく売り込まれています。

地銀ETF価格推移(2023年3月16日執筆時点)/ Google

地銀は住宅ローンや建設会社への貸し手ですから、もしも地銀が取り付け騒ぎ等を警戒して住宅ローンを貸し渋った場合、住宅市場に悪影響を及ぼす可能性があります。

地銀の混乱等が住宅市場に及ぼす影響についてアナリストに尋ねられたスチュアート・ミラーCEOは、以下のように回答しています。

小さな建設会社からシステム全体まで、地銀システムが幅広い住宅市場を支えているというあなたの指摘は完全に正しいです。単家族向け住宅の買い手は、資本コストだけでなく、資本化率にも波及するのを感じるでしょう。それらは上がるかもしれませんし、下がるかもしれません。それがどのように表面化するかについては、私たちは注意深く見守っていきます。

シリコンバレー銀行は、預金の多くを米国債やモーゲージ証券に投資をしており、そこに含み損を抱えていたことが取り付け騒ぎに繋がりました。各地銀が同様の事態を警戒して貸し渋ったなら、住宅市場には十分な資金が供給されなくなるでしょう。一方で、シリコンバレー銀行の経営破綻を受けて米国債の金利は低下していますから、ポジティブな影響もないわけではありません。

これらを総合したときに、住宅市場に今回の件がどのような影響を与えるかは未知数であり、引き続き、ウォッチしていくしかないということでしょう。

結論


※以下はニュースレター(無料)登録者向けの限定コンテンツです。

This post is for subscribers only