FOMCは0.25%の利上げ、今後の利上げには慎重な鳩派姿勢が示された
FOMCでは、事前の市場予想通りに0.25%の利上げとなりました。
一方で、シリコンバレー銀行の経営破綻を端緒とした銀行への不安の広がりは、信用収縮を起こして経済を萎縮させる効果があるとして、今後の利上げについては慎重な姿勢が示されました。
FRBは今後の利上げに慎重姿勢
3月22日に行われたFOMCで、FRBは事前の市場参加者の予想通りとなる0.25%の利上げを決めました。これによって、FF金利は4.75%〜5.00%となりました。
一方で、シリコンバレー銀行の破綻を端緒とする一連の混乱が経済やインフレに与える影響について懸念する文言が声明に盛り込まれ、今後の利上げについては慎重姿勢が示されました。
最近の動きは家計や企業の信用状況を厳しくし、経済活動や雇用、インフレに影響を与えるだろう
これは、まさに大手建設会社であるレナー社のCEOが述べていた不安と一致しており、いまアメリカは景気後退への警戒ムードが広がりはじめていることが分かります。
記者会見でも、パウエル議長は銀行への不安が経済やインフレに与える影響を懸念する答弁をしました。
ここ2週間の出来事が家計や企業にとっていくらかの信用収縮をもたらし、それによって労働市場の需要やインフレを抑制する可能性があると見ている。このような信用収縮は利上げと同じ方向に作用する
その他、金融システム全体への不安を喚起しないために、個別の銀行を潰すことなく救済する意志も示されました。これはいざとなれば銀行を救うためにいくらでもお金をつぎ込むということであり、緩和的に作用するでしょう。
この2週間、少数の銀行で深刻な問題が顕在化した。歴史は、個別の銀行問題を放置すれば、健全な銀行に対する信頼が損なわれ、銀行システム全体が脅かされることを証明している。こうした事態を受け、FRBは財務省などと協力して、断固とした行動を取った。これらの行動はすべての預金が安全であることを示す
米国3ヶ月国債の金利をみると、すでにピークを打って下落に転じているため、「FRBは債券市場の後追いだ」というガンドラック氏の言葉を参考にするなら、次回以降の利上げは行われないでしょう。
ニュースでは、FRBによる利上げの継続が行われるので鷹派だとするものも多いですが、今回声明文に追加された文章や記者会見の内容をみると、どう考えても、今回のFOMCは鳩派への転換と捉えざるを得ないと思います。
FRBの緩和再開を予想する投資家たち
さて、本ニュースレターにおいては、今回の利上げが最後となるだろうというガンドラック氏の見立てや、FRBが1年以内に金融緩和を再開するというレイ・ダリオ氏の見解を紹介してきました。
今回のFOMC声明やパウエル議長の記者会見発言からは、FRBは何か事が起これば金融緩和に戻ることも辞さない様子が実際に確認できた形となりました。そのため、FOMC前にはFRBの対応を警戒して上昇していた金利も、直後に大きく下落しています。
これは、ほんの数ヶ月前まで存在した「長期金利が4%」といった世界はもう完全に過去のものとなったことを意味していると言えるでしょう。
一方で、インフレ率は大きな景気後退なしには簡単に前年比+4%といった水準を割り込むまでに減速するとは思えません。そうなれば、いよいよインフレ第二派への警戒を高めていくフェーズとなるでしょう。
年初の時点でこの展開を読みきっていたガンドラック氏には、頭が下がるばかりです。
景気後退がパウエルの考えを変えさせるかもしれない。すでに景気後退入りしているか、数ヶ月以内に景気後退するであろうことを示すデータと、パウエルのインフレ率を下げるという決意の間には、強い対立関係がある。だから、どこかの時点でFEDが迷う状況が訪れるだろう。そして、債券市場を後追いしてFF金利を引き下げることになる。それが期待インフレ率の再上昇に繋がる。
結論
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