米国における銀行預金の流出はシリコンバレー銀行の破綻以前から始まっている
以前、米国銀行の預金流出が今後も続くであろうという債券王ガンドラック氏の見立てを紹介しました。
今回は、米国の銀行預金残高データが2023年3月22日週の数値まで更新されたため、そちらを確認していきたいと思います。
銀行預金の流出は続いている
3月22日週の銀行預金残高は$17.3Tでした。前週が$17.4Tほどなので、3月22日週にも$100Bほどの預金流出が続いていることが分かります。
以前のニュースレターでは、FEDが実質的に量的緩和を再開してまで銀行を支援している様子をお伝えしました。
改めてFEDのバランスシートを確認してみると、3月15日週、3月22日週と続けて資産が拡大しており、これは銀行から米国債を担保として受け入れて、現金を貸し出したことを表しています。
FEDが現金を貸し出す反対側には、現金を借りる銀行、つまり預金流出に見舞われている銀行がいるわけですから、「FEDの貸し出し増加」と「銀行の預金流出」は同じ事象の裏表であるといえます。
3月29日にはFEDのバランスシート拡大(FEDからの現金貸し出し)は落ち着いているので、銀行預金の流出も次週分からは落ち着くことが期待されますが、その通りになるかどうか注視が必要でしょう。
米国における銀行預金の流出は昨年から始まっていた
以前紹介したように、ガンドラック氏は銀行の預金金利と米国短期債の金利に差があることから、預金流出が今後も続くと予想しています。
多くの人々は、米国6ヶ月国債が当時で5%、今でも4.5%や4.25%といった金利がある中で、自分の銀行預金の利率があまりに低いということに気付いていなかっただろう。これだけ新聞やニュース番組で報道されたのだから、人々が銀行に預金していることで4%の金利を手放していることに気付いて、GDPに占める預金の割合が大きく下落しても驚かない。
このガンドラック氏の予想を裏付けるデータとしては、シリコンバレー銀行破綻以前の預金残高データがあります。もしも預金流出の原因がシリコンバレー銀行の経営破綻だけであるならば、それ以前は預金流出は起こっていないはずです。
さて、上にも貼りましたが、過去一年の預金残高の推移を改めて見てみましょう。
このグラフからは、昨年に急速に利上げが行われる中で、すでに預金の流出は始まっていたことが分かります。シリコンバレー銀行の経営破綻は、それを確かに加速させましたが、そもそも預金の流出自体がシリコンバレー銀行破綻の原因でもあります。預金が流出しなければ、シリコンバレー銀行は米国債を売却して実現損を計上する必要もなかったからです。
ここから読み取れることとしては、ガンドラック氏の言い分は正しく、短期金利が上昇する限り、今後も銀行の預金流出は続くことが見込まれるといえるでしょう。
結果、米国の金融市場は信用収縮が巻き起こり、アメリカはデフレに見舞われます。その後、FEDはさらなる現金の融資や金融緩和に手を出さざるを得なくなり、インフレの第二波が訪れるでしょう。それが一年以内だというのがレイ・ダリオ氏の見方であることは、たびたびお伝えしている通りです。
市中のお金が増えているのか・減っているのかをウォッチするにあたっては、本当はM2(マネーストック)が最も適切な指標です。これを見ると、例えば2023年2月は前年比で2.3%ほどお金が減っていることが分かります。
しかし、M2の難点はデータの公開が遅いことであり、銀行の預金残高やFEDの保有資産に関するデータの方が更新が早いことから、今後もこれらのデータをウォッチしていくのが望ましいでしょう。
結論:目先はデフレ的な影響が強い
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