レイ・ダリオ氏:米ドルの覇権は失われる
前回に引き続き、レイ・ダリオ氏のインタビューから気になる点をお伝えします。
覇権通貨の没落は繰り返し起こっている
そもそも、僕たちは米ドル覇権の時代に生きてきたので、多くの人は米ドルの覇権が失われるということを想像するのが難しいでしょう。しかし、歴史を研究してきたダリオ氏は、覇権通貨の没落は繰り返し起こってきたことだと指摘します。
覇権通貨の没落は繰り返し何度も起こっていることだ。イギリスのポンドも没落したし、オランダのギルドも没落した。それらは全て同じ理由で起こる。
覇権通貨が没落する理由として、ダリオ氏は2つの事象をあげています。
- 政府が負債をたくさん抱えてインフレ(通貨価値の下落)を招く
- 覇権通貨が武器として利用される
1つめについては、本ニュースレターの読者であれば改めて説明する必要はないでしょう。
以下のグラフを見ても、米国のGDPに対する負債の金額は121%であり、過去最高水準にまで達していることが分かります。(ちなみに日本は226%です)
さて、今回は政府の負債の話は置いておいて、2つめの「覇権通貨の武器化」について、ダリオ氏の意見を見ていきましょう。
米ドルの武器化が、米ドルを没落させる
ダリオ氏は、以下のように述べています。
経済制裁を通じた覇権通貨の武器化が行われている。言い換えると、米国における軍事力以外の最も強力な武器は経済制裁だ。経済制裁とは債券資産を凍結することだ。それはロシアに対して行われたし、中国や他の国に対しても脅迫を行っている。
たしかに、米ドルの覇権通貨としての地位を背景とした経済制裁は強力な武器ですが、これは同時に米ドルの覇権通貨としての地位を落とすことにも繋がります。
自分にも同じこと(経済制裁の対象とされたり、脅されること)が起こりうるという考えが浮かぶだろう。そして、どうして自分たちの国の通貨ではなく、第三者の国の通貨を使って決済をしているのだろうと考える。(中略)
サウジアラビアと中国が貿易を行っているとして、どうして米ドルで決済をする必要があるだろうか。米ドルを使う理由もないし、米ドルを持つことで経済制裁の対象になる可能性もある。だから、それらの決済の多くが他の通貨で行われるようになり、資産保全手段としての米ドルの利用価値も低下する。
国際貿易の場面で米ドルが使われるのは、それが「価値の保全手段として、安全な通貨だ」と認識されているからです。しかし、経済制裁の対象になるリスクを意識させるということは、その「安全な通貨だ」という認識を自ら壊すことに繋がります。
しかし、そもそも米国が多くの負債を抱えて、中国などの新しく台頭している覇権国家に挑戦されているので、ドルを武器化して対応する必要に迫られているわけです。
そう考えると、米ドルの没落に繋がるからといって、こうした手段を取らないこともまた難しく、だからこそ歴史上、繰り返し起こっているのだと言えます。
結論:ドル安のリスクを意識する
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