モハメド・エラリアン氏:債券市場は非常に混乱している
モハメド・エラリアン氏が、債券市場は株式市場ほど楽観的ではなく、不透明性の高まりを表しているとして、警戒を呼びかけました。
不可解な債券市場
モハメド・エラリアン氏は、株式市場が落ち着いてきたように見える件について意見を求められ、以下のように述べました。
株式市場だけを見ていたらそう考える(悪いニュースを織り込み済みだと考える)だろう。いま混乱を招いているのは債券市場だ。長い間、見ていないような状況が発生している。
続いて、債券市場で起こっている不思議な現象について、具体例を挙げています。
1ヶ月金利と3ヶ月金利の乖離
3ヶ月の米国債金利が、過去に見たことのないような水準で、1ヶ月の米国債金利を天文学的な水準で上回っている。
1ヶ月や3ヶ月といった短期米国債の金利を普段見ることはあまりありませんが、この機会に確認してみましょう。
まず、米国1ヶ月国債の金利は、以下のように推移しています。
2023年3月の開始時点では4.7%近くあった金利が3.4%まで低下しています。つまり、米国1ヶ月国債は物凄い勢いで買われているということです。
続いて、米国3ヶ月国債を見てみると、以下のようになっています。
こちらは2023年3月開始時点の4.8%程度から5.2%程度まで上昇しています。つまり、米国3ヶ月国債は売られているということです。
この1ヶ月と3ヶ月という僅かな差で米国債の金利が真逆に動いている点や、たった2ヶ月の差で1.6%も金利が違う点は、たしかに不思議です。
3ヶ月の金利が上昇している理由は、おそらくインフレが今のコンセンサスよりも長期化するので、高金利が維持される期間が長くなるという予想を折り込み始めているからでしょう。この点については、年初のガンドラック氏のラウンドテーブルの内容から、本ニュースレターでも繰り返しお伝えしてきました。
一方で、1ヶ月の金利が大きく低下しているのは、超短期運用への需要が高まっているからでしょう。例えば、消費者が銀行預金を引き上げて、米ドルMMFなどで運用すると、当然ながら超短期の米国債が買われることになります。
多くの人々は、米国6ヶ月国債が当時で5%、今でも4.5%や4.25%といった金利がある中で、自分の銀行預金の利率があまりに低いということに気付いていなかっただろう。これだけ新聞やニュース番組で報道されたのだから、人々が銀行に預金していることで4%の金利を手放していることに気付いて、GDPに占める預金の割合が大きく下落しても驚かない。
また、預金の流出や先行きの不透明性の高まりに対応するために、銀行もなるべく現金を短期で運用しようとするので、1ヶ月のような超短期の国債で運用するように方針を転換している可能性もあります。
リスクを嫌って、文字通り、投資活動を停止している様子を見ていることが伝わってきます。
5年債CDSの上昇
また、エラリアン氏は5年債のクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)が50bpsに近づいていることも指摘しています。
米国5年国債のCDSも50bpsに戻っている。これは過去10年で見たことのない水準だ。
実際に、過去を見てみると、最後の今の水準にあったのは2012年であり、10年ぶりの水準にまで急上昇していることが分かります。
これは米国5年国債がデフォルトする確率が上昇したと債券市場が考えていることを表しています。米国への信用が急速に低下していることを示しています。
株式市場の呑気さを信頼すべきではない
エラリアン氏は、株式市場の呑気さに付き合うべきではなく、警戒感を高めるべきだと指摘しています。
株式市場は不透明性が少ないと述べている。私は株式市場の考えに完全にコミットすべきではないと考える。何が起こるか分からない。非常に不透明な状況だ。
債券投資家は、一般的に株式投資家よりも賢いとされているからです。
債券市場は、株式市場よりもマクロ経済に精通していることが多い。FEDの利上げ期待を見てみると、FEDはもう一度利上げしてそこで維持すると言っていた。それがベースラインで、市場はもっと利下げが必要になるのではないかと疑っていた。しかし、もっと利上げが必要になるかもしれないという疑念も急速に台頭してきた。利上げが5月以降にもう1回行われるという予想は20%を超えてきている。経済にも政策にも大きな不透明性な点が多い。
結論:ポジションサイズの縮小を開始
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