ドラッケンミラー氏:AI関連のNVDIAやMicrosoft株を購入
アメリカでは、大きな金額を動かしている投資家は四半期に一度、そのポジションを開示する必要があります。今回は世界的なグローバルマクロ投資家であるドラッケンミラー氏のポジションを見ていきたいと思います。
なお、ドラッケンミラー氏の経済の見立てについては、以下のニュースレターで紹介していますので、あわせてご覧ください。
2023年1QはAI関連銘柄に積極投資
ドラッケンミラー氏は、2023年1QはNVDIAとMicrosoftを買い増して、AI関連銘柄に積極投資していました。彼はネットでは株式ポジションはほぼ0であると発言しているため、同時に他の株式をショートしているものと思われます。
ショートポジションは開示対象ではないので、具体的な銘柄を見ることはできませんが、彼が経済がハードランディングするという見方をしていることからも、NYダウやラッセル2000などの景気に敏感な指数や個別銘柄をショートしているのではないかと考えられます。
NVDIAについては、35%ほど株数を増やして、ポートフォリオの9%程度を占めています。これは株式ロングで3番目に大きなポジションです。
NVDIA株は、2022年に金利上昇によって大きく下落しましたが、長期金利が頭打ちして下落に転じると、今年は大きく反発して最高値に迫る勢いとなっています。
この背景には、ChatGPTなどのAIが最先端の半導体の需要を大幅に喚起するとの見方があるのでしょう。いまテックカンパニーは人材やサーバーなどへの投資を削る一方で、Generative AIの競争に乗り遅れないように、この領域については積極的に投資を行っています。
NVDIAは最先端の高度な半導体に特化しており、半導体全般を設計・製造している会社が不況に苦しむ中でも、AIやメタバースといった膨大な計算力が必要な領域が伸びるのであれば成長が期待できます。
以下は、アナリストによるNVDIAのEPSの過去推移と今後のコンセンサスです。
順調に成長することが見込まれていることが分かります。
ドラッケンミラー氏は、以前のインタビューの中で、以下のようにNVDIAについて触れていました。
アメリカの経済がもしもハードランディングに向かっていて、ひどい景気後退になるとしても、NVDIAのような企業がどうなるのかは分からない。景気後退になったとしても、大きく成長し続けている企業はどうだろう。そうした企業の株が下がるかどうかは分からない。
また、そのChatGPTを提供しているOpenAI社に積極的に出資しているのがMicrosoftで、コンシューマー領域ではAppleやGoogle、Amazonなどの後塵を拝しているMicrosoftはAIをフックにコンシューマー領域に攻め入ろうとしています。
Microsoftについては、新たにポジションを構築しており、ポートフォリオの9%程度を占めています。
MicrosoftのEPS推移は以下の通りです。こちらもインフレ率を上回る10%台の成長が続くことが見込まれています。
株式ポジション自体はネットでゼロにしつつ、こうした大きな世の中の動きをとらえたポジションを取っているのは、やはりドラッケンミラー氏のマクロ投資家としての真骨頂だといえます。
相対的に「有望な株」と「危ない株」
インフレや金利上昇で最も厳しいのは赤字企業です。借金のコストも上がるし、そもそも金融が引き締められている中では借り換えができずに破綻する可能性もあります。
一方で、黒字の企業については、適切なバリュエーションにさえなってしまえば、インフレ(名目的な経済成長)と一緒に売上や利益も増えていくため、比較的安全な投資先となりえます。
また、景気後退で業績が著しく悪化するような企業は、今後のハードランディングシナリオにおいて大きく株価が下落する可能性がありますが、そうした環境下でも成長していける企業であれば相対的に株価は下がりにくいでしょう。
こうした差分を取りにいこうとしているのが、ドラッケンミラー氏の「AI関連銘柄ロング&景気敏感株や赤字企業ショート」というロングショート戦略の本質だといえます。
先日のニュースレターで、僕は以下のように書きましたが、ある種それをロングショートに落とし込んだようなポジションだといえます。
そうすると、米国株も(米国債による景気後退リスクのヘッジとあわせて)多少は保有するものの、あまりポジションを大きくしたいとは思いません。特にキャッシュフローが常にプラスの大型株はまだしも、景気敏感株は避けるべきでしょう。
結論:ロングショート戦略の注意点
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