6 min read

米国ISM製造業景況指数:5月は46.9%で悪化、今の米国経済はインフレ頼み

2023年5月の米国ISM製造業景況指数は46.9%で、4月の47.1%からさらに悪化しました。今の米国の状況は、経済活動は実質的に停滞しており、雇用の強さとインフレ頼みの名目成長が続いている状態だといえます。

米国ISM製造業景況指数の概観


米国ISM製造業景況指数は、前月の47.1%から悪化して46.9%となりました。

ISMの景況指数は、製造業、非製造業などに分かれており、いずれも50%を下回ると景気が悪化していることを示します

米国製造業景況指数の推移(2023年5月分まで)/ ISM
米国の製造業景況指数は悪化しました。5月に46.9%を記録して、4月の47.1%から0.2ポイントの悪化となりました。7ヶ月連続で50%を下回っており、2022年6月に始まった下落トレンドが継続しています。そのトレンドが反映されて、ISM製造業景況指数の12ヶ月平均は49.4%へと下落しました。

米国製造業景況指数の詳細


内訳の数字を個別に見ていくと、製造(Production)やEmployment(雇用)で成長が見られたものの、新規注文(New Orders)や注文在庫(Backlog of Orders)は弱さを示しており、各社が製造業者への注文を絞っていることが伺えます

米国製造業景況指数の内訳(2023年5月分)/ ISM

新規注文と注文在庫は、過去の推移をみても、一貫して下落トレンドにあり、ISM製造業景況指数の悪化を率いる指標となっています。

ISM製造業景況指数[新規注文]の推移(2023年5月分まで)/ ISM
ISM製造業景況指数[注文在庫]の推移(2023年5月分まで)/ ISM

その背景にあるのが、顧客在庫(Customers' Inventories)の増加です。つまり、製造業者から各種素材を仕入れた流通業者は、それが売れないので、在庫が積み上がっているということです。

ISM製造業景況指数[顧客在庫]の推移(2023年5月分まで)/ ISM

これは米国の小売業界が苦戦していることを考えると、実に自然な成り行きです。

5月16日に発表された小売売上高は前年比+1.6%で、前年比マイナスに向かう勢いを見せました。過去には、小売売上高の前年比がマイナス入りする前後で景気後退が見られているため、いよいよ米国の景気後退は迫っているようにも見えます。

今の米国経済の状況


最近の指標をもとに、今の米国経済の状況を簡単にまとめると、以下のようになっていると言えるでしょう。

  • 物は上流から下流まで一様に売れなくなっている
  • 人は足りておらず、賃金の上昇は続いている
  • 全体として、インフレは下げ渋りをみせている

つまり、経済活動自体はすでに悪化しており、今の米国経済を支えているのは人不足とインフレ(特に賃金インフレ)です。

その結果が、第2四半期からの米国GDP実質マイナス入りです。

今後は、以下の2つのシナリオが考えられるでしょう。

  1. インフレが減速するにしたがって、景気後退が強く意識されるようになる
  2. 今の状況(実質でマイナス、名目でプラス)が続くうちに、経済活動が持ち直してくる

ここ1年で頻繁に使われるようになった言葉でいうなら、前者が「ハードランディング」で、後者が「ソフトランディング」です。

このどちらのシナリオが実現するかは、どこまで世の中のお金がスピード感を持って回収されるかによるでしょう。つまり、FEDの金融政策が鍵を握っているということです。

僕自身は、現時点では前者のハードランディングを予想していますが、引き続き、米国経済の状況を丁寧に見ていく必要があるでしょう。

FF金利もしばらく5%程度に維持されるでしょうし、銀行の貸し渋りも考えると、名目ベースのマネーストックも引き続き減少していくでしょう。そうすると、実質のマネーストックがコロナ前の水準に戻ってくるのも時間の問題だといえます。
にほんブログ村 株ブログ 米国株へ
クリックしていただくと応援になります

結論:景気後退の兆候は徐々に増えている


※以下はニュースレター(無料)登録者向けの限定コンテンツです。

This post is for subscribers only