米国ISMサービス業景況指数:サービス業は景気拡大するも減速がみられる
ISMサービス業景況指数は50.3%で景気拡大を示しましたが、前回の51.9%と比べると1.6ポイントの減速となりました。また、注文残の減少、顧客在庫の増加など、ISM製造業景況指数と同様の悪化傾向が見られました。
ISMサービス業景況指数は50.3%
6月5日に発表された、2023年5月のISMサービス業景況指数は50.3%でした。
5 月のサービス業景況指数は50.3%を記録しました。4月の51.9%と比べると、1.6ポイントの減速となりました。
本指数は、50以上であれば景気が拡大していることを意味します。そのため、50.3%という数値は2023年5月もサービス業全般は景気が良かったことを示しています。これは景気の悪さを示していたISM製造業景況指数とは大きな違いです。
一方、上のグラフを見ていただくと、景気の拡大速度については、2021年の下旬から減速傾向が続いていることも分かります。このペースであれば、早ければ来月には景気減速に転じる可能性もあります。
雇用は減少、新規注文や注文在庫も減少
それでは、ISMサービス業景況指数の内訳を見ていきましょう。
50%以上で拡大している項目が多いものの、その拡大速度は4月と比べると減速しています。例えば、新規注文(New Orders)は4月の56.1%から3.2ポイントの減速となっています。
また、在庫(Inventories)は11.1ポイント増の58.3%に対して、注文残は8.8ポイントと急減して40.9%になっています。これは過去の注文を納品しているけれど、それが納品先の在庫となっているため、新しい注文が得られていないことを示しています。
これはISM製造業景況指数でも同様の傾向が見られていました。
新規注文と注文在庫は、過去の推移をみても、一貫して下落トレンドにあり、ISM製造業景況指数の悪化を率いる指標となっています。その背景にあるのが、顧客在庫(Customers' Inventories)の増加です。つまり、製造業者から各種素材を仕入れた流通業者は、それが売れないので、在庫が積み上がっているということです。
サービス業においても、減速が始まっている
ISMサービス業景況指数は、ISM製造業景況指数の後を追うように減速しており、近いうちに50%を割り込んで、景気後退を示唆する水準に陥りそうです。
小売やGDP、ISM製造業景況指数に続いて、ISMサービス業景況指数も近いうちに景気後退を示すのであれば、米国経済で強い数字は、いよいよ雇用統計のみとなりそうです。
時給は前年比+4.3%の上昇でした。前回からは少し減速していますが、ここ数ヶ月は横ばい気味で、下げ渋りをみせるようになってきています。やはり失業率の上昇なしに、賃金インフレが2%に向けて減速していくのは難しいでしょう。全体としては、失業率の上昇が少し気になったものの、前回に引き続き、まだまだ高金利の維持が必要であることが再認識された雇用統計だといえます。
雇用統計は、基本的に一番最後に悪化する数値として知られています。FEDは賃金インフレを退治したいはずなので、引き続き、高金利を維持するものと思われます。そうすると、小売やGDP、ISM製造業景況指数やISMサービス業景況指数といった数値の悪化はこの先も続くでしょう。
結論:景気後退の局面は近づいている
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