ガンドラック氏:3月の銀行破綻は過去の経済危機に匹敵する規模
債券王としても知られる、DoubleLine Capitalのガンドラック氏が、年半ばのオンラインセミナーを行いました。今回はそこから今年3月の銀行破綻に触れた箇所をお伝えしたいと思います。
3月の銀行経営破綻問題
2023年3月にはシリコンバレー銀行などを中心にいくつかの銀行が経営破綻しました。
この話については、本ニュースレターで何度も取り扱ってきたため、再度の詳しい説明は避けますが、(1)米国債などの資産がFEDの急速な利上げで大きく値下がりしたこと、(2)短期金利が上がったことで銀行預金を引き出して、短期のMMFや米国債を購入する動きが広がったこと、の2つが組み合わさった結果、取り付け騒ぎのようになったことが、その経営破綻の原因でした。
ガンドラック氏は、利上げが終わらない限り、人々が銀行から預金を引き出す動きは止まらないので、銀行の経営破綻が続くだろうと指摘していました。
多くの人々は、米国6ヶ月国債が当時で5%、今でも4.5%や4.25%といった金利がある中で、自分の銀行預金の利率があまりに低いということに気付いていなかっただろう。これだけ新聞やニュース番組で報道されたのだから、人々が銀行に預金していることで4%の金利を手放していることに気付いて、GDPに占める預金の割合が大きく下落しても驚かない。
実際に、その後もいくつかの銀行に経営危機の話がたびたび生じています。
FEDが素早く対応したため、今後大きな銀行が破綻することはないでしょう。しかし、小さな銀行の破綻は引き続き起こる可能性があります。
上のニュースレターにも書いたように、現在アメリカの銀行は、米国債を担保にFEDからお金を借りることができるようになりました。そのため、一時的な取り付け騒ぎであれば、FEDからお金を借りて対応できます。一方、根本的に預金が流出して、ビジネスを続けるだけの規模が保てない場合は、廃業せざるを得ません。
流動性の問題には耐えられるものの、根本的な預金の流出によるビジネスの縮小には耐えられないということです。
銀行破綻の悪影響は想定以上に大きい可能性がある
さて、目先の大きな銀行が破綻するような危機は過ぎ去ったものの、これがどのような悪影響を経済に与えるかについては楽観的に考えるべきではない、ということを多くの学者や投資家が繰り返し述べています。
本ニュースレターでも、著名投資家や学者の警告をたびたび取り上げています。
私が市場のコンセンサスと反対側にいるのは「2007年や2008年の状況とはまるで違う」と皆が繰り返している点についてだ。まず、彼らは2007年にもその後の状況や銀行システムの脆弱性を予想できていなかった。私は2008年よりも悪い景気後退を予想しているわけではないが、そうした可能性にオープンでないことはあまりにナイーブだろう。
銀行業は信用に基づいているので、信用が失われると悪いことが起こる。良いニュースは、赤信号(最悪の危機)は過ぎ去ったことだ。今は黄信号のフェーズにある。我々は流動性の問題から資本の問題へと移行しているし、金融危機から経済危機へと移行している。
デフォルトサイクルがやってくる。それはもうすぐ見えてくるだろう。そのマグニチュードと、さらに興味深いことに、そのデフォルトサイクルの期間は人々を驚かせるだろう。
今回、ガンドラック氏は3月に経営破綻した銀行の資産規模がGDPに占める比率というデータを持って、その影響の大きさを語りました。
3月の銀行破綻はGDPの2%程度に相当する
グラフをみると、経営破綻した銀行は数行であるものの、GDPに占める比率は2%程度であり、過去の経済・金融危機の水準である2.5%に近いことが分かります。
破綻したのはいくつかの銀行だけだが、その規模はそこそこ大きい。GDPの2%以上の銀行破綻が生じたケースをふり返ってみると、世界大恐慌があり、80年代〜90年代のSNL危機があり、そしてグローバル金融危機(=リーマンショック)があった。
第二次世界大戦に繋がった世界大恐慌や、リーマンショックの水準に匹敵するというのは、注意を払うのに十分な指摘です。
S&L危機については、聞きなれない方も多いと思いますが、1970年代にアメリカがインフレに苦しみ、1980年代に高金利でインフレを封殺した際に、S&L(貯蓄銀行)、日本でいうところの信用金庫のような小規模な金融機関が数百件という規模で廃業しました。
最大で500件も廃業した年もあるほどで、地元の小規模な経済に大きな悪影響を与えました。この間、アメリカではインターネット産業が大きく成長したため、その痛みを埋めて、全体の株価は伸びていきましたが、小さな地元経済にとっては長く暗い時代でした。
ガンドラック氏は、以下のように悲観的な見通しを示しています。
これが私たちが経済的に直面している事態であり、予想を上回る経済成長を期待する人たちもいるが、どこに経済が加速する要素があるのかを見つける方が難しい。
結論:景気後退への警戒と、可能性のある領域への期待のバランスが重要
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