日本の消費者物価指数(2023年5月分)は+3.2%で正念場
日本の消費者物価指数は前年比+3.2%で、前回から0.3ポイントの減速となりました。
日本の消費者物価指数ベースのインフレ率は横ばいの形を見せ始めており、今の前年比+3%程度の水準で横ばいになると、日本株や日本経済にとっては恩恵が大きいと考えられます。
一方で、エネルギーおよび食料品を除いたコアコアのインフレ率は+4.3%に加速しています。また、企業物価指数は+5.1%という高水準であり、5月は輸入物価指数も上昇に転じているため、インフレ加速への警戒は引き続き必要です。
日銀が早めに対処して、インフレの加速を防ぎ、今のマイルドなインフレを継続させることが重要でしょう。
日本の消費者物価指数は前年比+3.2%
2023年5月分の日本の消費者物価指数は前年比+3.2%で、前回から0.3ポイントの減速となりました。
一方、エネルギーおよび生鮮食品を除いたインフレ率は、前年比+4.3%で、前回からは0.2ポイントの加速となりました。
前回はインフレが再加速している旨を指摘して、警戒を促しましたが、基本的にはエネルギー価格のデフレが、根っこのインフレを相殺しているという形で、同じ状況が継続していると思います。
前回の消費者物価指数のレターでも書いた通り、エネルギー価格のデフレ効果は今後失われていくため、引き続き、インフレには警戒が必要でしょう。
根っこのインフレは進んでいた中で、原油などのコモディティ価格や円高の影響で見た目のインフレ率は相殺されて抑えられていたところが、ついに再加速を始めたというのが4月の消費者物価指数の内容になります。5月はエネルギー価格が前年比で有利に出やすいため、また一服感が出ると思いますが、6月以降はまたインフレ率は加速していくでしょう。
また、先行指標である企業物価指数はまだ前年比+5.1%と高い水準にあるほか、5月の輸入物価指数において、インフレが加速していた点にも注意が必要です。
輸入物価指数ですが、5月は前月比+2.2%と3ヶ月ぶりの上昇に転じました。直近は141円台まで円安が進んでいるので、輸入物価は上がりやすい状態にあるといえます。もしも輸入物価が再び上昇トレンドに転じたなら、それは企業物価指数に影響を与えて、いずれは消費者物価指数にも影響を与えるでしょう。
インフレ率を今の水準で抑えられれば株価にはプラス
日本のインフレは、決して油断できる状況ではありませんが、一方で、長年の低インフレを考えると、今の前年比+3%程度のインフレは決して悪くはありません。
日本のインフレ率が+3%程度で続くのだと考えるようになれば、物の値段が上がる前に買えるものは買っておこうという習慣が根付くでしょうし、設備投資や資産運用も進むでしょう。
また、日本がデフレを脱却してインフレに向かえば、企業の業績もそれにあわせて名目上は成長していくため、将来の成長を織り込んで株価も上昇することになります。2021年が米国株にとって素晴らしい時期であったように、マイルドなインフレというのは株価にとってもプラスです。
実際に、日経平均が直近上昇しているのは、明らかに日本の脱デフレを意識してのことでしょう。
対処が遅れると欧米のような高インフレを招く可能性
一方、上のようなバラ色のシナリオが描けるのは、あくまでもインフレ率が今の+3%程度の水準で止まった場合です。
もしも、インフレがこのまま加速を続けて、欧米のような+9%といった水準まで進めば、これまた欧米のように5%といった水準まで政策金利を引き上げなければなりません。日本は欧米と比べても、GDPに対する国債の発行量が多いですし、利上げによって国債の価格が暴落すれば、日本の経済は非常に大きな痛みを経験することになるでしょう。
アメリカのインフレが前年比+9%といった水準まで加速したのは、FEDが金融の引き締めを始めるのがあまりに遅かったためです。エネルギーと食料品を除いたインフレ率は+4.3%と大きく2%目標を超えているわけですから、日銀は今のマイルドなインフレを保つために、早めに手を打つ必要があると思います。
日銀が早めにインフレの加速を抑えれば、一時的には日本の株式市場は金融引き締めを嫌悪して下がるかもしれませんが、長期でみると、インフレがマイルドな状況でとどまることを好感するでしょう。日銀のインフレ対策は、今がまさに正念場だと思います。
結論:日銀が適切に対処するなら、日本株は長期で投資できる
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