ガンドラック氏:債券は割安で値上がりも見込める、株式は割高
引き続き、ガンドラック氏のインタビューです。
株式のバリュエーションは割高
株式市場について問われたガンドラック氏は、今の株式市場の歪な構造について指摘しています。
株式市場の話をするなら、セクターを分けなければならない。まず、S&P7がある。AIといえば株価が20%上昇するような偏った市場だ。それから、S&P493がある。こちらは直近追い風が吹いているが、数週間前までは年初から横ばいだった。
S&P7の筆頭格はエヌビディアでしょう。AIブームによって、最先端の半導体を製造しているエヌビディアの株価は年初来で3倍ほどになっています。
以前紹介したように、これをピタリとあてて、ロングショート戦略で利益をあげたドラッケンミラー氏もさすがですが、そうした一部の銘柄による相場の牽引を危険視するガンドラック氏の見方も理解できます。
ガンドラック氏が、今の株式市場が割高であると指摘する背景には2つの要素があります。
1つは逆イールドなどの景気後退の予兆から、近い将来に企業業績が下がるリスクがあること。もう1つは、FEDの利上げが続くなら、株式のマルチプルが剥げ落ちるはずであることです。
非常に限られた一部の銘柄が市場全体を率いており、逆イールドやFEDの利上げを考えると、かなり怖い水準のバリュエーションまで上昇している。S&P500は、将来利益ベースでPER19倍だ。もしも景気後退が起きれば、その将来の利益は大きく減ることになる。
株式価格は、業績(ファンダメンタルズ)× マルチプルで決るので、目先その両方に赤信号が灯っている株式市場には強気になれない、ましてやPERが19倍もあるならいわんや、というのがガンドラック氏の主張です。
この点は僕も同じ考えであり、米国債がポートフォリオ全体に占める割合は10%以下と非常に少なくなっています。
ガンドラック氏の薦めるバーベル・ポートフォリオ
では、どこに投資妙味があるかといえば、債券だと答えるのが、債券王ガンドラック氏らしいところです。
今はバーベルポートフォリオを、債券でリスクを取りつつ組むべきだ。
バーベル・ポートフォリオというのは、長期の債券と短期の債券を組み合わせたポートフォリオで、それが両端の盛り上がったバーベルの形に似ていることから、そのように呼ばれています。
ガンドラック氏の薦めるバーベル・ポートフォリオは、まず長期債には米国債をはじめとした安全な債券を組み込みます。そして、短期債には不動産ローン担保証券や社債など少しリスクが高い代わりに利回りの高い債券を組み込んで、全体の利回りを底上げします。
もしも景気後退で短期債の一部が破綻したとしても、長期の米国債などが景気後退時には上昇するため、そうしたリスクを相殺することができます。
これは、ETFで行うのはやや難しく、幅広い債券に生で投資できる機関投資家ならではの戦略だとは思いますが、ひとつの参考にはなると思います。
もしも、似たような戦略をなんとか個人投資家が組もうと思う場合は、利回りを多少諦めて買える範囲で短期社債を買うか、代わりにAT&Tなどの7%〜8%程度の配当利回りが期待できる安定した大企業の株式を組み込むなどが考えられるかもしれません。
債券市場は割安
ガンドラック氏は、年初から一貫してこの債券投資戦略を薦めていますが、直近では株式の割合を減らして、こうした戦略で運用される債券の割合を増やすべきだとしています。
債券市場は、株式市場と比べて非常に安い。デフォルトリスクのない、非常に格付けの高い債券でも利回り5%のポートフォリオが組める。上手に運用されたアクティブ運用の債券ポートフォリオであれば、8%、9%、10%といった利回りも可能だ。
上手に運用されたアクティブ運用の債券ポートフォリオというのは、上述したようなバーベル・ポートフォリオのことです。
彼が債券に強気なのは、債券が2022年から今年にかけて、あまりに下落してきたため、利回りが魅力的な水準にあり、ダウンサイドのリスクも少ないからです。
クレジットの価格は、利上げと一部の恐怖の影響で、100から80、70、60、50まで下がった。いくらかリスクのあるクレジットを100の価格で買えば、かなり悪い条件になる。なぜなら価格が上がることはないからだ。(中略)。また、100から始まれば80、70、60、50と値下がりする可能性がある。しかし、債券ポートフォリオを60で買い始めれば、アップサイドがある。株式市場のような、あるいはそれよりも大きなアップサイドだ。しかも、ダウンサイドはほとんどない。
そうした中で、株式は大きく上昇してしまったので、ますます債券の投資妙味が増しているといえます。
株式は簡単に50%ほど下落しうる。私のキャリアでも何度もあった。しかし、債券価格は巨大なデフォルトが生じない限り、32.5まで下がることはない。そして、もしも巨大なデフォルトがあれば、株式の下落幅は50%どころじゃない。
株式のマルチプルは、先ほども書いたようにPER19倍ですから、PERが高金利で15倍程度まで下がって、将来利益が景気後退で3割程度下がれば、簡単に半分程度まで価格が下落します。しかし、債券は今も低い価格水準にあるため、こうしたリスクは比較的小さいといえます。
以下を読んでも分かるとおり、ガンドラック氏はかなり債券投資に強気です。
今の債券市場は、先ほど述べたようなバーベル・ポートフォリオを組めば、株式市場の4倍の利回りが得られる。しかも、国債で破綻リスクをヘッジできる。なぜなら、長期国債の金利は1%や2%ではないからだ。10年国債の金利は4%もあり、経済やリスク資産におかしなことが起これば、簡単に2%程度まで下がりうる。それは利回りに加えて20%のキャピタルゲインだ。超長期債であれば40%のキャピタルゲインも可能だ。それがリスクを相殺してくれる。今は債券投資にとってエキサイティングな時期だ。
結論:債券の投資妙味は大きい、注意点はインフレ第二波
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