ガンドラック氏:FEDの利上げは失策、金利はピークを超えた
FOMC後のガンドラック氏のCNBCインタビューから、複数回に分けて、債券王ガンドラック氏の見通しをお送りします。今回は金融政策や金利に関する部分をまとめています。
FEDは利上げをすべきではなかった
ガンドラック氏は、以前から、FEDはこれ以上の利上げをすべきではないと訴えていました。
今回、FOMCでの利上げを受けて、もはやインフレ率は十分に下がっており、今回の利上げは必要なかったと見解を述べました。
インフレ率は低下しており、CPIは9.1%から2.98%まで下がってきた。それから今後、数ヶ月でいくつかの大きな項目でインフレの減速があり、コアPCEも3%まで下がるだろう。PCEは近いうちに2%台に入るだろう。だから、私たちはインフレ率はFEDが喜ぶ水準まで下がっているはずだ。
また、遅効指数である住宅価格の家賃換算という計算手法を取り除くと、すでにインフレ率は0%になっているとガンドラック氏は述べています。
家主の家賃換算を実際の住宅価格の推移で置き換えたなら、CPIはすでに2.9%ではなく0%だ。
アメリカのインフレ率が十分に下がってきた点は、本ニュースレターでもカバーしてきました。
利上げは、今回でおそらく終わりというのが債券市場の見方で、インフレ率や賃金が粘りを見せても、FEDのドットプロットをみると、あと1回程度でしょう。
つまり、ガンドラック氏のように今回の利上げは必要なかったという意見もあるものの、インフレ率は低下しており、利上げはおおむね終わりだという大局はだいたい共有されていると言えます。
景気後退はあるのか
そうすると、次の論点は、インフレ率の低下がそのまま景気後退につながるのかどうかという点です。
この点について、ガンドラック氏は、以下のように述べています。
パウエル議長はインフレは一時的だといって、インフレ率が4%で止まらずに9%まで上昇したことを反省しているのかもしれない。しかし、彼は同じ過ちを繰り返しているかもしれないということを考えるべきだ。今度はインフレ率が下に突き抜けるかもしれない。
例えば、小売売上高などは、もう何ヶ月もインフレによってプラスを維持しているものの、実質ベースではマイナスが続いています。
インフレの下支えがなければ、とっくに景気は後退しているという考え方もできます。
この点について、パウエル議長は、景気後退はメインシナリオではないとしています。その理由は、前回の金融緩和によるクッションが大きいので、インフレ率が下がってくる中で、十分に景気を下支えできるから、というものです。
司会者に意見を問われたガンドラック氏は、以下のように回答しました。
歴史をみると、イールドカーブの逆転と信用収縮があると、必ず何かしらの方リストをきっかけに、なぜ債券市場が逆イールドを形成しているのかが再認識される。しかし、システムへの何かしらのショックが必要であり、それはまだ起こっていない。今年の年初には随分と悪い予感がしたが。
つまり、ガンドラック氏の考えでは、景気後退が意識されるトリガーがないだけで、景気後退に向かう状況は整っているということです。
この点に関する、僕の現時点での考えは、アメリカの景気はいずれ後退するものの、それまでに案外長い間、米国の景気は持つのではないかというものです。
米国消費者の現在の状況を考えると、金利の高騰によって住宅などの高い買い物は控えていますし、目先の給与は上がっています。株式やビットコインなどのブームも終わっており、そちらにお金が吸い取られることもありません。
そうすると、一部の市場やアクティビティは止まっており、なんとなく高いものを買い控えたりはしているものの、目先の家計のキャッシュフローは良いのだと思います。
金利は、すでに天井をつけている
最後に、ガンドラック氏の金利についての見通しを見ておきましょう。
まず、10年金利については、昨年の時点でピークをつけたと予想していたガンドラック氏ですが、その予想が当たったことを再確認しました。
昨年の9月のイベントで、私は10年金利はもうピークをつけたと言った。それは正しかった。10年金利は非常に落ち着いているし、ピークからは程遠く、0.4ポイント〜0.5ポイントほど低い。
また、ガンドラック氏は短期金利についてもピークを越えたと述べました。結果、米国債の金利はどれもピークを越えており、安心して保有できるとの見解を述べました。
私は金利はピークをつけたと思う。米国債を持つことに一切の心配はない。品質の高い銀行ローン債権も好きだ。ドルは、ドル安トレンドが始まったと思う。コモディティ価格は上昇を始めた。
ガンドラック氏は、今年に入って、一貫して「長期の国債で景気後退リスクをヘッジしつつ、もう少しリスクの高いクレジットもので利回りを底上げする投資戦略」を薦めています。
金利がピークを越えたのであれば、その投資戦略で最も高いインカムゲインを確保できる時期は過ぎたものの、そうした投資戦略の安心感は上がったといえるでしょう。
また、新興国債券についても、最も美味しい時期は過ぎたものの、投資機会があるとの見解を述べました。
新興国債券にも投資機会がある。不幸なことに少し遅いが。新興国債券全体のバスケットでみると、スプレッドは4.5ポイントまで下がって、タイトになってしまった。
結論:ポートフォリオのサイズを徐々に大きくする
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