FRBは政策金利を維持、利上げサイクルは終了
written by @mercurys_assets
今回のポイント
- 今週のFOMC会議において、FRBは政策金利を5.25%-5.50%に維持する決定を下した。これは7月の利上げ以降、政策金利が横ばいとなり、利上げサイクルが終了したことを示している。
- インフレ率の低下と賃金インフレの収まりが、FRBにとって安心材料となっている。失業率が上昇に転じている中で、政策金利のさらなる引き上げよりも雇用や景気の状況を注視すべき時期に入ったことが背景にある。
- 利上げの終了に伴い、債券市場の金利も低下しており、金利上昇に関する懸念は一時的に収束している。今後の焦点は景気後退の有無であり、ガンドラック氏は逆イールドが解消に向かっていることを根拠に景気後退が近いと警鐘を鳴らしている。
FRBは政策金利を5.25%-5.50%に維持
今週の火曜日・水曜日にFOMCが開催され、FRBは政策金利を5.25%-5.50%に維持することを決定した。
7月の利上げを最後に、米政策金利は横ばいが続いており、2022年から急ピッチに進められてきた利上げは基本的に終わったと考えて良いだろう。
市場参加者の金利推移予想をみても、利上げは打ち止めで、来年の夏頃からの利下げを織り込んでいる。
その背景にあるのが、当然ながら今年順調に低下してきたインフレ率である。米国CPIの前年比の推移をみると、以下のように前年比+3%台に落ち着いている。
あらゆるインフレの中でも粘着性が強いといわれる賃金インフレが収まってきた点には、FRBも一安心していることだろう。
一方で、失業率は3.8%と底打ちをして上昇に転じた様子を見せている。
FRBとしては、すでにインフレ率を2%ほど上回っている政策金利をこれ以上に引き上げるよりも、雇用や景気が悪化しないかに注意を払い、様子をみたい局面に入ってきたということだろう。
ガザ地区の問題がこじれて原油が急騰でもしない限り、利上げは終わったといえよう。
債券金利も低下
利上げの終了を受けて、頭打ちの様子を見せているのが債券市場の金利である。
長期金利を確認すると、10月には一時的に5%に達する場面もあったが、現在は4.7%まで低下している。
短期金利を確認すると、こちらもFOMCを受けて4.9%に低下している。
昨年末から今年の年初にかけても金利は横ばい・低下していたので、今回の金利低下も同じように騙しである可能性も排除はできない。
しかし、政策金利とインフレ率の関係をみると、今は政策金利がインフレ率をざっくりと2%も上回っているのだから、昨年末とは状況がだいぶ違う。債券市場の金利もピークを超えたと考えるのが自然だろう。
論点は景気後退の有無へ
金利がピークを超えたのであれば、金利上昇を警戒して、債券や株が売られるという10月の調整相場はいったん終わりだろう。
これからは、FEDが金利を5.25%-5.50%に維持して様子を見る中で、景気後退が来るのかどうかに論点が移っていくと考えられる。たとえば、債券王のガンドラック氏は、逆イールドが解消に向かっていることを理由に景気後退は近いと警鐘を鳴らしている。
逆イールドとは、短期金利が長期金利を上回っている状態である。たとえば、直近は2年金利(4.9%)が10年金利(4.7%)を上回っているので逆イールドの状態である。
通常、逆イールドが発生して、解消したあとには、景気後退入りすることが知られている。
以下のグラフは、10年金利から2年金利を引いた値の推移であり、0%を下回っている部分が逆イールドだ。これがプラス圏に戻った(=逆イールドが解消した)あとには、景気後退(グレーの網掛け)が訪れていることがわかる。
そして、直近をみると、深い逆イールドだったところから、急速にプラス圏に向かっている様子が見てとれる。これがガンドラック氏の景気後退が近いというナラティブの根拠である。
結論:金利低下から利益を得るポジションを取る
※以下はニュースレター(無料)登録者向けの限定コンテンツです。