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ジェイミー・ダイモン氏:メキシコは最も魅力的な投資先である

written by @mercurys_assets

今回のポイント

  • JPモルガンCEOのジェイミー・ダイモン氏は、現在の世界情勢においてラテンアメリカと北米が比較的安定している地域として際立っていると指摘。特に、新型コロナウイルスや戦争による影響を受けた北米企業が生産ラインをメキシコに移す可能性があることを強調した。これにより、メキシコはグローバル企業にとって魅力的な投資先となっている。
  • ダイモン氏は、メキシコの経済インフラが既に充実しており、資本市場はさらなる成長の可能性を秘めていると述べた。メキシコのGDPと株式市場の時価総額を例に挙げ、これらがもっと大きい数字であるべきだと指摘。また、高度な技術セクターの存在もメキシコの魅力の一つとして挙げられた。
  • ダイモン氏は、メキシコが実施した金融政策、特に金利を早期に引き上げたことを正しい判断と評価した。メキシコでは、政府債務GDP比率も減少に転じており、メキシコ・ペソの価格もそれに伴って反発している。メキシコは投資家にとって、為替リスクの観点からも魅力が増している。
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ジェイミー・ダイモン氏:メキシコは最も投資機会のある国のひとつ


今回は、米国最大の銀行JPモルガンのCEOであり、"太陽王"として知られるジェイミー・ダイモン氏のBloomberg TVによるインタビューの内容をお伝えする。

さて、ジェイミー・ダイモン氏をはじめとして、有力な投資家・金融マンは最近、口を揃えて、米国の財政問題と長期金利上昇の可能性を繰り返し指摘する。当然、今回のインタビューでもそうした内容は語られている。

しかし、本ニュースレターでは既にかなりこの話題を取り扱ってきた。そのため、今回はそうした内容は割愛して、他の話題に触れたいと思う。財政問題と長期金利の上昇については、過去のニュースレターを読んでいただきたい。

さて、今回のインタビューはジェイミー・ダイモン氏のメキシコ出張にあわせて行われたため、メキシコについて触れられている。ジェイミー・ダイモン氏はメキシコへの関心を隠さない。

もしも国をひとつだけ選ばなければいけないとしたら、メキシコは最も投資機会のある国かもしれない。

これは口先ではなく、実際にJPモルガンはメキシコへのエクスポージャーを拡大しているという。

JPモルガンだけを見ても、メキシコに長期的な投資を行っている。私たちは過去6年で、メキシコへの資本投入を2倍や3倍に増やしてきた。

メキシコの経済状況


さて、ここでまずは一旦メキシコの経済状況を各種指標で確認しておこう。

まず、実質GDPの成長率だが、コロナによる落ち込みと反動による急成長を経て、直近は前年比+3%〜4%の間で推移している。

メキシコの実質GDP成長率(2023年2Q分まで)/ FRED

続いて、インフレはアメリカと同じように2021年〜2022年にかけて急加速して、2023年に入ってからは減速を続けている。直近のインフレ率は4%台となっている。

メキシコのインフレ率(2023年12月2日執筆時点)/ FRED

これらを見ると、基本的にはメキシコの経済状況はアメリカと似ているといえる。実質GDP成長率は(為替を考慮していないが)ざっくりとアメリカよりも1ポイントほど高く、インフレの状況も似ている。

決して悪くはないが、米国最大の銀行家であるジェイミー・ダイモン氏に「最も投資機会のある国のひとつ」と言わせるほどの魅力はこれらの数値からは見えてこない。

では、ジェイミー・ダイモン氏はメキシコのどこに魅力を感じているのだろうか。

メキシコは相対的に平和で安全な国


ダイモン氏が一番にあげている理由は、直近の不安定な世界において、南米が比較的安定しているからだ。

私たちはニアショアリングとそれがもたらす巨大な機会についても話した。ニアショアリングは、特に現在の世界情勢を考えると、メキシコやアメリカでのビジネスを大きく促進する可能性がある。ラテンアメリカと北米が、今日の世界で比較的平和と安定の地域であることを認識することが重要だ。この状況は、メキシコに大きな機会を生み出していることは想像に難くない。

ヨーロッパでは、ロシアとウクライナの戦争によってエネルギー不足や混乱が巻き起こっている。中東では、イスラエルとハマスの間で戦闘が始まり、こちらも混迷が深まりそうである。また、アジアには台湾問題という火種がくすぶっている。

このように戦争の時代にあって、北米と南米にはそうした問題が存在していない。新型コロナや戦争によって、安定したサプライチェーンの再構築を迫られている北米のグローバル企業が、一部の生産ラインを比較的平和な隣国であるメキシコに移す可能性は十分に考えられる。

先日のニュースレターで紹介したレイ・ダリオ氏のインタビューでも、ダリオ氏は国内・国外ともに社会的対立の少ない国が魅力的だとしていた。

レイ・ダリオ氏はそうした条件を満たす国として、インド、シンガポールおよびサウジアラビアをあげていたが、メキシコもまさに条件を満たす国のひとつだと言えるだろう。

メキシコの資本市場にはもっと大きなポテンシャルがある


また、ジェイミー・ダイモン氏は、メキシコの経済インフラが充実している点についても指摘している。

メキシコにはすでに非常に有能な企業、大学、インフラ、テクノロジーがある。

ジェイミー・ダイモン氏は、メキシコにはすでに良質な経済インフラが整っており、本来はもっと資本市場が育つポテンシャルがあると論じている。

メキシコの資本市場を見てみると、数字をいくつか挙げるなら、メキシコの GDP は 1 兆 3,000 億ドルだ。株式市場の時価総額は 4,000 億ドルだ。それらはもっと大きい数字であるべきだ。だから、ここに資本市場を成長させ、海外からの直接投資とより多くの投資の両方を呼び込む大きなチャンスがある。ここにはテクノロジー部門もある。私は数多くのハイテク企業と会ったが、それらは非常に印象的だった。そこでも成長が見られるだろう。そしてメキシコ経済が成長するにつれて、これらの産業を支えるあらゆるものが成長する。

ご存じの通り、ジェイミー・ダイモン氏は投資家としてメキシコを語っているのではなく、100年以上メキシコで事業を展開してきた銀行のCEOとして、メキシコの現状を的確に把握している。

メキシコは我々にとって非常に重要な市場だ。我々はここで120年も事業を展開してきたし、ラテンアメリカ中で100年以上も事業を行なってきた。我々は6,000人ほどの従業員を擁して、1,300以上の大企業を顧客に持っている。

そうした中で、ここ数年はさらにメキシコへの投資を加速させてきたというのである。

ジェイミー・ダイモン氏のいうように、メキシコの資本市場にこれから海外からの投資が舞い込んで大きく育つのであれば、株式や債券にも当然お金が流れ込んでくることになるだろう。

メキシコの金融政策は正しかった


また、ジェイミー・ダイモン氏はメキシコの金融政策についても好意的にコメントしている。

多くのラテンアメリカの国々は金利を早々に急速に引き上げた。彼らの判断は、経済を長い目で見た場合におそらく正しかったと思う。メキシコの失業率は非常に低く、インフレ率も減速している。だから、メキシコはおそらくインフレを克服できるだろう。

なお、インタビューでは触れられていないが、メキシコはGDPに対する政府負債の比率も日本やアメリカと比べると随分と少ない。

メキシコの政府債務GDP比率(2023年12月2日執筆時点)/ 世界経済のネタ帳

2010年代には政府負債が膨らんでいたが、直近は頭を打ったように下落に転じている。また、その割合はピーク時でもGDPの60%を超えていない。

政府負債が膨らみ続けて、財政問題が声高に叫ばれているアメリカと比べるとその差は歴然である。さらに政府債務の多い日本とは比べるまでもない。

アメリカの政府債務GDP比率(2023年12月2日執筆時点)/ 世界経済のネタ帳

メキシコの政府債務残高の対GDP比率がピークを打って下落に転じるのと連動するように、ドルに対するメキシコ・ペソの価格も反発している。

メキシコペソのドル建て価格(2023年12月2日執筆時点)/ Google

もちろん、今後もメキシコ・ペソの価格が上昇を続けるとは限らないが、メキシコの財政政策がアメリカに比べてまともに推移する限り、メキシコ・ペソはドルに対して強含みやすいだろう。

また、ジェイミー・ダイモン氏のいうように、もしも今後メキシコの資本市場にお金が流れ込むのであれば、メキシコ・ペソはなおさら上昇しやすいといえるだろう。

つまり、メキシコへの投資は為替リスクの面からも投資妙味があるということである。

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結論:妙味のあるメキシコにどう投資するか


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