逆イールドが解消:景気後退をシグナルか
written by @mercurys_assets
今回のポイント
- 逆イールドの解消に注意:
米国10年債と2年債の逆イールドが解消された。景気後退が近いことを市場がシグナルしており、過去をみると、逆イールドの解消後には、ほぼ確実に景気後退入りしてきた。 - 景気後退とポートフォリオ戦略:
景気後退に備えるには、守りのポートフォリオを組み、債券の比率を高めることが一般的である。
逆イールドが解消
米国10年債と2年債の逆イールドが解消した。
「逆イールドの解消」というのは、少しややこしい概念であるため、順を追って説明したい。
逆イールドとは
通常、債券の金利というのは、短期の金利よりも長期の金利の方が高い傾向がある。2年後に元本を返してもらえるのと、10年後までお金を返してもらえないのでは、後者の方がリスクが高いため、その分だけ金利も高くなければ割に合わないということだ。
また、景気が良くなっていく見通しであれば、今よりも将来の方が金利が上がっている可能性が高い。短期の債券は直近の政策金利、長期の債券は将来の予想政策金利を織り込む。そのため、将来の方が金利が上がっていく見通しであれば、それも長期金利の方が高くなる要因となる。
だから、10年債の金利と2年債の金利を比べると、通常は10年債の金利の方が高いはずである。この状態を「順イールド」と呼ぶ。
しかし、時々これが逆転することがある。2年債の金利が10年債の金利を上回るのである。今回であれば、2022年の夏に、2年債が10年債の金利を上回り、逆イールドが始まっている。
では、逆イールドは何を示唆しているのかといえば、それは将来の景気後退である。
逆イールドは、将来の景気後退を示唆している
2年債の金利が10年債の金利よりも高いというのは、今後2年の金利が、今後10年の金利よりも高いと市場が予想していることになる。つまり、短期的には金利が高い一方で、将来的に金利が下がっていくということである。
好景気の後半になって、FRBがインフレを抑えるために利上げを行なっていくと、短期の金利が上昇する。一方で、その利上げがいずれ景気後退を招くと考えると、その後は利下げが行われるはずなので、将来的には金利が下がっていくというわけだ。
逆イールドは、まさにそういう状態で発生する。だから、逆イールドが発生した時点では好景気である。FRBが利上げを行えるほど景気が良いから、短期金利が上昇して、逆イールドが発生しているのだ。逆イールドは、あくまでも今が景気のピークに近く、将来的にどこかで景気が悪化していくという予告に過ぎない。
しかし、その予告はなかなか正確であることが知られている。
以下は、10年債の金利から2年債の金利を引いた数字を長期でグラフにしたものである。
プラス圏にあるところは10年債の金利の方が高い、つまり順イールドの期間である。逆に、マイナス圏にあるところは10年債の方が金利が低い、つまり逆イールドの期間である。また、グレーの部分は景気後退の期間である。
そうすると、マイナス圏に沈んだあとには、必ずといっていいほどグレーの期間があることが分かる。言い換えると、逆イールドのあとには、必ずといって良いほど景気後退がある。市場参加者の予想というのは凄いものだ。
景気後退が実現するのは、逆イールドの解消後
さて、先ほど、逆イールドは景気後退を高い精度で予告するが、発生時点では好景気の真っ只中である、と書いた。
では、その予告が実現するタイミングはいつなのか、ということだが、それはひとことで言ってしまえば「逆イールドの解消後」である。
先ほどのグラフを見ていただきたいのだが、グレーの景気後退は、マイナス圏からプラス圏に浮上した直後、つまり逆イールドの解消直後に起こっていることが分かる。
景気後退を察すると、FRBによる利下げを予想して2年金利が下がり始める。そうすると、2年金利が10年金利を再度下回り、逆イールドが解消するというわけだ。
今回も、9月のFOMCから利下げが始まると市場が確信したことで、ずっと4%〜5%で高く推移していた2年金利がするすると3%台まで下がり始めている。
市場が利下げを予想している背景には、失業率の悪化がある。ずっと低く推移していた失業率は直近上昇に転じている。
このまま失業率が上昇し続ければ、景気後退入りである。そうすると、FRBは大幅な利下げに追い込まれるだろう。市場はそれを予想して、2年金利が下落し、逆イールドが解消したのである。
もちろん、市場参加者の予想が必ずしも正しいとは限らない。しかし、過去を見る限り、その予想は極めて精度が高い。もう一度、先ほどのグラフを貼っておきたい。
結論:景気後退を視野に入れて、守りのポートフォリオを組む
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